独立事務所を構えて20年ちょっと。初めの頃はあまり仕事のない時期が続き、そして2004年、ふとした経緯で三鷹で飲食店の設計を依頼されました。それが今回の展示会場となるリトルスターレストランです。
さて唐突ですが、私の建築を志した学生時代からの一貫したコンセプト。それはすごく簡単に言うと「いかに建築を自由につくるか?いかに自由に生きるか?」。それは建築家が自由な発想で大胆なデザインをするということだけでは全然なくて、むしろそれとは真逆。「人間が、個人として自由に生きられるための場所を如何につくるか?」ということ。建築家のつくった権力的な空間に人々は縛られてはいけない。いやもちろん建築家も自由だ。あたりまえ。だれでも自由なのさ。自由である人間どうしが自由な社会で、如何に美しいものをつくるのか?
そういえば、もう30年も昔のこと。大学の卒業設計でいきなり「デザインしないデザイン」「つくらない建築」を提出し、ものすごく叱られてビリから3番目の成績をつけられたことを思い出す。当時はまったく理解されなかったけれど、今となっては俺の考えてたことは間違ってなかった、と確信している。すごく高度なデザイン、と理解してもらえると嬉しい。
閑話休題。
そういう私があるとき、リトルスターレストランを始めようとしている人たちに出会い、店づくりを一緒に始めた。波長が合った。素晴らしいお店空間が出来上がった。そして、その数年後にお店オーナーご夫婦にご自宅の設計も依頼していただいた。そのことが「私の目指す建築家の役割」つまり「人間が自由に生きるための場所づくり」への信念を強化してくれた。
..という思いをもって活動している私にその後、有り難いことに沢山の人たちから「家の設計」を依頼していただくこととなる。
私の設計手法は、当然、流行のかっこいいデザインでお客様をノックアウトすることではない。あえて言えば、そんなのはむしろ簡単。そうじゃないんだ。
家づくりにおいて、打合せでは、とことん雑談する。家はこうあるべき..とは決めない。施主一家の無理難題な妄想を一緒に真剣に考える。でも当然、世の中に完全な自由が存在しないのと同じで、完全に自由な家だなんて実現するわけがない。そこで、どうやって「自由」を定義し、どこに着地するか、を考える。それが「設計」というものだ。そしてもちろん「自由」なだけでなく、私が図面を引くのだから美しくかっこいいデザインになる。
私に依頼してくださった施主さんたちは、このことを理解してくれた。
だから、どの家も素敵な空間に完成した。本当に有り難い。
私もうれしいが、施主さんたちもうれしいはずだ。
..というふうにつくってきた住宅たちを今回、リトルスターレストランで展示させていただきます。椅子に座ってテーブル越しにちょうど「窓」が目の高さになるように写真パネルをセッティングしています。
作品展のタイトルは「窓の景」。
「窓」とはまさに「家」が外の世界(社会や環境)と交わるインターフェイスであると同時に、外を歩く他人から見たときに「どんな人が住んでいるか、生きているか」を表すアピアランス。
リトルスターレストランで美味しいものを食べながら、私と施主ご家族がつくった自由な家の「窓」を体感し、「家」ってなんだろう?って感じていただけたらとても嬉しいです。
トークイベントも企画しています。あたらしく家を作りたい人は勿論、私の設計した家の施主さんたちも是非、ご参加ください。楽しみだなあ!
ということで、どうぞよろしくお願いいたします。